
福利厚生
中小企業の福利厚生費はいくら?予算の目安とおすすめ制度・失敗しない選び方
Contents
中小企業で福利厚生を充実させたいと考えても、
- いくら予算をかければよいのか
- どの福利厚生から導入すべきか
- 大企業のように多数の制度を用意する必要があるのか
と迷う企業は多いでしょう。
実際、帝国データバンクの調査では、今後何らかの福利厚生を取り入れたい中小企業は49.4%と約半数にのぼります。一方で、中小企業では制度設計や運用にかかる費用、人事・総務のリソース不足が導入の障壁になっています。
参考:帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態アンケート」
そのため、中小企業の福利厚生では、単純に制度の数を増やすのではなく、限られた予算で「従業員が実際に使う」「採用でも説明しやすい」制度を選ぶことが重要です。
この記事では、中小企業における福利厚生費の予算の考え方から、おすすめの福利厚生、導入時の注意点まで解説します。
中小企業の福利厚生費はいくらかかる?
中小企業が福利厚生を検討するとき、最初に整理しておきたいのが「福利厚生費」の範囲です。
福利厚生費には、法律上企業負担が必要な社会保険料などの法定福利費と、企業が独自に導入する法定外福利費があります。
種類 | 主な内容 |
|---|---|
法定福利費 | 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険など |
法定外福利費 | 住宅補助、食事補助、健康診断の上乗せ、旅行・レジャー、慶弔、福利厚生サービスなど |
企業が「福利厚生を新しく導入したい」と考える際に、主に検討対象となるのは法定外福利厚生です。
従業員1人あたりの福利厚生費
福利厚生費について引用されることの多い経団連の2019年度調査では、法定外福利費は従業員1人あたり月額24,125円でした。
参考:日本経済団体連合会「2019年度 福利厚生費調査結果」
ただし、この数字をそのまま「中小企業が1人あたり月2万円以上使うべき」と考えるのは適切ではありません。
この調査の回答企業は平均常用従業員数が4,525人と大企業中心で、住宅関連や医療・健康、文化・レクリエーションなど、企業が負担するさまざまな福利厚生費を合計した数字だからです。
さらに、経団連の福利厚生費調査は2019年度を最後に終了しています。
つまり、現在の中小企業について「福利厚生は1人月○円が平均」と判断できる公的な最新統計は乏しいのが実情です。
そのため、新しい福利厚生を導入する際は「平均額」から決めるより、従業員1人あたりにいくら投資できるかを起点に年間予算を計算する方が現実的です。
企業規模別の福利厚生予算をシミュレーション
たとえば、新しい福利厚生制度へ使う予算を1人あたり月500円・1,000円・3,000円とした場合、年間コストは次のようになります。
従業員数 | 月500円/人 | 月1,000円/人 | 月3,000円/人 |
|---|---|---|---|
10名 | 年6万円 | 年12万円 | 年36万円 |
30名 | 年18万円 | 年36万円 | 年108万円 |
50名 | 年30万円 | 年60万円 | 年180万円 |
100名 | 年60万円 | 年120万円 | 年360万円 |
これは「福利厚生費の適正相場」を示す数字ではなく、予算を決めるためのシミュレーションです。
中小企業では、
- まず年間30万円程度から試す
- 実際に利用されるか確認する
- 利用率や社員の反応を見て予算を増やす
という導入方法も考えられます。
すべての社員に毎月固定費が発生する制度だけでなく、利用時に費用が発生するサービスや、少人数から導入できる福利厚生も比較するとよいでしょう。
30名・50名・100名企業の福利厚生費を試算
福利厚生の予算は、会社全体の金額で見ると判断しやすくなります。
従業員30名の場合
30名の企業で1人あたり月1,000円を福利厚生に使う場合、
月3万円・年間36万円
です。
年間36万円であれば、たとえば以下のような使い方が考えられます。
- 食事補助
- 健康支援
- レジャー・宿泊優待
- 社内交流費
- 学習支援
一方で、福利厚生サービスによっては最低契約料金が設定されているため、30名以下では1人あたりの負担が大きくなることがあります。
たとえばベネフィット・ステーションは、現在1人あたり月1,000円~で提供されています。
小規模企業ほど「1人単価」ではなく、最低料金を含めた年間総額を確認することが重要です。
従業員50名の場合
50名で1人あたり月1,000円なら、
月5万円・年間60万円
です。
この規模になると、総合型の福利厚生サービスだけでなく、特定の目的に絞ったサービスも選びやすくなります。
たとえば、
- 日常生活を幅広く支援する
- 採用時に特徴として打ち出す
- 社員や家族の旅行を支援する
- 社員同士のコミュニケーションを増やす
など、目的別に予算を配分できます。
従業員100名の場合
100名で1人あたり月1,000円なら、
月10万円・年間120万円
です。
年間100万円を超えると、単に「福利厚生を導入している」という状態ではなく、その投資によって何を実現したいのかを明確にした方がよいでしょう。
採用、定着、従業員満足度、健康、社内交流など、目的ごとにKPIを置く方法もあります。
中小企業が福利厚生を導入する目的
厚生労働省は、福利厚生について、従業員のモチベーション向上や人材の確保・定着に寄与する制度と位置づけています。
2026年には、中小企業の福利厚生について、人材定着や採用力向上につながった事例も公表しました。
中小企業では、特に次の3つを目的として考えると制度を選びやすくなります。
採用力を高める
中小企業では、給与や企業規模だけで大企業と競争するのが難しい場合があります。
そこで重要になるのが、
「この会社で働くと、どのような体験やメリットがあるか」
を伝えられる福利厚生です。
マイナビが2026年卒の大学生・大学院生を対象に行った調査では、企業に安定性を感じるポイントとして「福利厚生が充実している」が57.3%で最多でした。
参考:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒大学生就職意識調査」
福利厚生そのものだけで入社先が決まるわけではありませんが、企業を見る際の判断材料の一つになっていることは分かります。
離職を防ぎ、従業員の定着を図る
中小企業では、採用人数を増やすだけでなく、入社した従業員に長く働いてもらうことも重要です。
2025年版中小企業白書でも、人材が不足していない企業ほど、採用した従業員の定着率が高い傾向が示されています。
また、人材確保に効果があったと考えられる職場改善策の一つとして「福利厚生の充実」が挙げられています。
ただし、福利厚生を導入すれば自動的に離職率が下がるわけではありません。
従業員が求める制度とのずれがないかを確認することが重要です。
従業員に給与以外の価値を提供する
福利厚生には、
- 生活費を軽減する
- 健康を支援する
- 家族との時間を充実させる
- 学習機会を提供する
- 社員同士の交流を生み出す
など、給与とは異なる形で従業員を支援できる特徴があります。
特に中小企業では、予算が限られているからこそ、「広く薄く」よりも、自社の社員が価値を感じる領域へ集中投資するという考え方が有効です。
福利厚生に予算をかけるなら何を優先すべき?
中小企業の福利厚生では、制度数を増やすこと自体を目的にしない方がよいでしょう。
優先したいのは次の3点です。
採用時に説明しやすい福利厚生
採用に活用するなら、
当社は福利厚生サービスに加入しています
だけでは、求職者に具体的なメリットが伝わりにくい場合があります。
一方、
- 月○円まで食事を補助
- 家賃を月○万円補助
- 資格取得費を会社が負担
- 社員や家族が宿泊施設を利用できる
といった制度は、入社後の利用場面をイメージしやすくなります。
「求人票に1行書くだけで価値が伝わるか」は、採用目的の福利厚生を選ぶ際の一つの判断基準です。
利用率が高くなりやすい福利厚生
福利厚生の費用対効果は、単純なサービス数では測れません。
たとえば1人月1,000円の制度を100人に導入すれば年間120万円ですが、実際に利用する社員が10人しかいなければ、利用者1人あたりでは年間12万円の固定費を払っている計算になります。
そのため、
契約人数ではなく、実際の利用人数・利用回数まで確認する
ことが重要です。
会社の目的と従業員ニーズが一致する福利厚生
経営側が良いと思う制度と、社員が使いたい制度は必ずしも一致しません。
可能であれば導入前に、
- 欲しい福利厚生
- 現在の制度への不満
- 実際に利用しそうなサービス
を簡単なアンケートで確認しましょう。
中小企業におすすめの福利厚生
中小企業が福利厚生を選ぶ際は、人気ランキングだけではなく、自社の目的に合わせて選ぶ必要があります。
食事・生活支援
食事補助や住宅補助などは、日常生活の負担軽減につながるため、メリットを理解しやすい福利厚生です。
マイナビの調査でも、就職先に求める福利厚生として「交通費支給制度」が57.0%、「住宅手当・家賃補助制度」が53.6%と上位でした。
参考:マイナビキャリアリサーチLab「2026年卒大学生就職意識調査」
採用ターゲットが若年層の場合は、生活費へ直接影響する制度を検討する価値があります。
健康・育児支援
健康診断の追加項目、人間ドック、育児・介護支援なども代表的です。
年齢層や家族構成によってニーズが異なるため、従業員構成を確認してから導入するとよいでしょう。
宿泊・旅行
宿泊や旅行は、日常的な生活支援とは異なり、一度の利用で大きな体験価値を提供しやすい福利厚生です。
帝国データバンクの2025年調査では、「今後導入したい福利厚生」として社員旅行の実施・補助が11.4%で、フレックスタイムと並び最多でした。
参考:帝国データバンク「福利厚生に関する企業の実態アンケート」
従来型の全員参加の社員旅行だけでなく、
- 社員本人の旅行
- 家族旅行
- チーム合宿
- オフサイトミーティング
- ワーケーション
など、利用方法を柔軟に設計する考え方もあります。
合宿・社内交流
リモートワークや拠点分散が進んでいる企業では、社員同士が対面で過ごす機会を福利厚生や組織施策として設ける方法もあります。
2025年版中小企業白書では、社内コミュニケーションが円滑な企業ほど従業員の定着率が高い傾向も示されています。
ここでも、「福利厚生だから交流を増やす」のではなく、自社が抱えているコミュニケーション課題に合うかどうかで判断することが重要です。
中小企業が福利厚生を導入する際の注意点
固定費が高すぎないか
福利厚生サービスには、
- 1人あたり月額課金
- 企業単位の固定料金
- 初期費用
- 利用時の追加料金
など、複数の費用が発生する場合があります。
必ず、
初期費用+月額費用×12か月+利用時費用
で年間総額を確認しましょう。
たとえばResort Worxは、「月額4.9万円~」で法人向け福利厚生サービスを提供しています。
参考:Resort Worx
同じ月4.9万円でも、社員20名なら1人あたり約2,450円、100名なら約490円です。
固定料金型サービスは企業規模によって1人あたり負担が大きく変わるため、料金表の最安値だけで比較しないようにしましょう。
利用する社員が偏らないか
制度によっては、
- 子育て世帯だけ
- 若手社員だけ
- 都市部の社員だけ
など、利用者が偏ることがあります。
すべての福利厚生を全員が同じように使う必要はありませんが、特定の社員しか利用できない制度ばかりになっていないかは確認しましょう。
選択肢を増やしすぎない
総合型福利厚生サービスには、グルメ、レジャー、育児、介護など非常に多くのサービスが用意されています。
ベネフィット・ステーションでは140万件以上の優待を提供しています。
幅広いニーズをカバーできる点は大きなメリットですが、中小企業が必ずしも同じ戦略を取る必要はありません。
自社の目的が、
採用で差別化したい
なのであれば、
「福利厚生が100種類あります」より、「社員が実際に使いたくなる特徴的な制度があります」と説明できる方が有効な場合もあります。
特に限られた予算の中では、利用目的が明確な特化型福利厚生も比較するとよいでしょう。
人事・総務の仕事を増やさない
導入後に、
- 利用申請
- 領収書確認
- 精算
- 社員からの問い合わせ
- 利用状況の集計
が大量に発生すると、福利厚生を充実させた結果、人事・総務の負担が増えてしまいます。
中小企業では専任担当者がいないケースも多いため、運用まで含めて簡単かどうかは重要な比較ポイントです。
福利厚生サービスの選び方
福利厚生サービスは、大きく「総合型」と「特化型」に分けて考えると分かりやすくなります。
比較項目 | 総合型 | 特化型 |
|---|---|---|
サービス内容 | 幅広い | 特定分野に特化 |
メニュー数 | 多い | 少ない |
向いている企業 | 幅広いニーズをカバーしたい | 導入目的が明確 |
採用時の説明 | 「福利厚生が充実」 | 具体的な制度を説明しやすい |
選び方 | 網羅性重視 | 利用率・独自性重視 |
総合型と特化型の違い
総合型は、幅広い社員ニーズに対応しやすいのが特徴です。
一方、特化型は、
- 食事
- 健康
- 育児
- 学習
- 宿泊
など、特定の領域へ集中できます。
どちらが優れているというより、何を解決したいかによって選ぶべきサービスが変わります。
自社に必要な機能だけを選ぶ
福利厚生を検討するときに、
- 有名だから
- サービス数が多いから
だけで決めるのは避けましょう。
先に、
- 採用
- 定着
- 従業員満足
- 健康
- 社内交流
など、優先順位を決めます。
その目的を達成するために必要な福利厚生を選ぶ方が、予算を有効に使いやすくなります。
少人数から導入できるか確認する
10~50名程度の会社では、最低利用人数や最低月額料金によって費用対効果が大きく変わります。
そのため、
- 最低契約人数
- 最低月額料金
- 初期費用
- 契約期間
- 単発利用の可否
を必ず確認しましょう。
宿泊・旅行の福利厚生は中小企業と相性がいい?
宿泊・旅行型の福利厚生は、すべての企業に最適とは限りません。
一方、採用で特徴を出したい、社員に分かりやすいメリットを提供したい企業では検討しやすい福利厚生の一つです。
採用時に伝わりやすい
たとえば、
福利厚生サービスを導入しています
より、
社員は古民家や一棟貸しの宿泊施設を福利厚生として利用できます
と説明した方が、入社後の利用イメージは具体的になります。
採用サイトや求人票でも写真とセットで伝えられるため、制度の存在を視覚的に訴求しやすい点も特徴です。
社員や家族がメリットを実感しやすい
宿泊は利用頻度こそ毎週ではありませんが、旅行時の支出額が大きいため、一度の利用でも価値を実感しやすい特徴があります。
日常型福利厚生と宿泊型福利厚生を、どちらか一方に絞る必要もありません。
たとえば、
日常の生活支援は総合型
+
特徴的な福利厚生として宿泊体験
のように組み合わせることもできます。
合宿や研修にも利用できる
福利厚生だけでなく、会社の合宿・研修・オフサイトなどにも利用できるサービスであれば、福利厚生予算とは別の用途でも活用できます。
「社員個人への還元」と「会社としての利用」の両方が可能かも比較ポイントになります。
中小企業の福利厚生に関するよくある質問
中小企業の福利厚生費はいくらが目安ですか?
一律の適正額はありません。
経団連の2019年度調査では法定外福利費が1人月24,125円でしたが、大企業中心の調査であり、中小企業が新規福利厚生へ使う予算の目安としてそのまま利用するのは適切ではありません。
参考:日本経済団体連合会「2019年度 福利厚生費調査結果」
まず1人月500~3,000円など複数の予算で年間総額を試算し、自社で継続可能な金額を決めるとよいでしょう。
福利厚生は採用に効果がありますか?
福利厚生だけで採用が決まるわけではありませんが、求職者が企業を判断する材料の一つです。
2026年卒学生を対象としたマイナビ調査では、企業に安定性を感じるポイントとして「福利厚生が充実している」が57.3%で最多でした。
中小企業庁も、福利厚生の充実などの職場環境改善が人材確保に寄与する可能性を示しています。
福利厚生は何から導入するべきですか?
最初に「採用」「定着」「生活支援」「健康」「社内交流」など、導入目的を決めましょう。
そのうえで、従業員アンケートを行い、ニーズと会社側の目的が重なる制度から導入するのがおすすめです。
大企業のように福利厚生を多く用意する必要はありますか?
必ずしも必要ありません。
中小企業では予算や運用担当者が限られるため、制度数よりも「実際に使われるか」「採用時に価値が伝わるか」を優先する考え方があります。
限られた予算だからこそ、利用される福利厚生に投資しよう
中小企業の福利厚生では、大企業と同じ数の制度をそろえる必要はありません。
むしろ、
- 誰のために導入するのか
- 何の課題を解決したいのか
- 年間いくらまでなら継続できるのか
- 社員が実際に利用するのか
を明確にした方が、費用対効果を判断しやすくなります。
福利厚生の導入意欲は中小企業でも高まっており、厚生労働省も人材定着・採用力向上につながる中小企業の事例を紹介しています。
参考:厚生労働省
特に採用で他社との差を伝えたい企業では、単にメニュー数を増やすのではなく、社員が具体的な利用シーンを想像できる福利厚生を検討するとよいでしょう。
YASMYでは、宿泊体験を福利厚生として活用する仕組みを提供しています。
社員への福利厚生だけでなく、合宿・研修などの活用も含め、自社に合う宿泊福利厚生の設計を検討できます。
著者について
YASMYメディア戦略室
YASMYメディア戦略室は、中小企業の福利厚生、採用・定着、リモートワーク、業務委託など、多様な働き方・雇用形態における組織づくりを研究・発信するYASMYの編集チームです。 働く場所や雇用形態が多様になる中で、企業と人のつながりをどのように設計するかという視点から、宿泊や地域での体験を活用した新しい福利厚生・チームづくりの選択肢をわかりやすく紹介していきますのでぜひチェックしてみてください!

